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CG’s EYE

県内私立中学入試の振り返りと、来春入試の主な変更点

No.046 2019年07月23日

今回のCG‘sEYEは、今春行われた県内私立中学入試の振り返りと、来春入試の主な変更点をお届けします。

2019年度は卒業予定者数、受験率もアップ

首都圏(1都3県)の小学校卒業生数と中学受験率の推移をまとめたのが【1】です。卒業生数は昨年の小学校卒業生数から約9千名増え29万3千名、受験者数も若干増の4万8,500名程度と推定されます。受験率に注目すると、2015年をボトムに上昇傾向にあることが分かります。ちなみに来春卒業予定の小学6年生は、今春卒業予定者数とほぼ同じ7万8千名あまりと見込まれます(2018年度学校基本調査)。

【1】小学校卒業生数と受験率

今春の県内私立中学入試概況をまとめたのが【2】です。男子校だった桐蔭学園中等教育が桐蔭学園と一本化・共学化し、女子校だった富士見丘学園が共学化したため校数の内訳が変わりました。57校で行われた入試回はのべ243回。のべ受験者数は昨年から約1千名増えた3万2千名あまりでした。一方、合格者数は昨年から約100名増え1万3千名あまり、実質倍率は昨年より0.14ポイント上がった2.48倍でした。
県内では50校が複数回の入試を設けています。主流は4教科入試ですが、最近は英語と他教科の組み合わせや教科融合型の出題、自己PRと面接など多岐にわたります。また公立中高一貫校受検者に対応した適性検査型入試も今春は12校で実施されました。さらに、教育の特色を反映した入試も見られます。受験生は志望校と午後入試も含めた入試日程と種類を見極め受験するわけですが、WEB出願を採用する学校が増え、前日夜や当日の出願も可能になっています。

【2】県内私立中学入試状況(帰国生入試を除く)

  男子校 女子校 共・別校
校(昨年) 10(11) 21(22) 26(25) 57(58)
のべ入試回 28 88 127 243
募集定員(※1) 1,670 2,485 3,575 7,730
のべ受験者 7,985 7,616 16,945 32,546
のべ合格者 2,759 3,957 6,409 13,125
実質倍率(※2) 2.89 1.92 2.64 2.48
参:入試1回校 栄光学園(2/1)
慶應義塾普通部(2/1)
浅野(2/3)
フェリス女学院(2/1)
横浜雙葉(2/1)
湘南白百合学園(2/2)
慶應義塾湘南藤沢一次(2/2)  

(※1)「若干名募集」は含まず。帰国生含めた定員の場合は帰国生含む。
(※2)のべ受験者÷のべ合格者

男子校・共学別学校は難化傾向

男女別に見ていきましょう。男子校はもともと校数が少ないこともあり、全体では2.89倍という狭き門が続いています。栄光学園・聖光学院・浅野のいわゆる神奈川御三家は都内からの受験者も多いことなどから、2月3日の浅野中学は今年も1回の入試では県内最多の1,573名が受験、実質倍率も昨年から0.1ポイントアップしました。浅野同様に入試回が2月1日1回だけの栄光学園は、昨年より134名多い845名が受験、実質倍率は昨年から0.7ポイントアップの3.2倍となりました。慶應義塾普通部も2月1日1回のみの入試。594名が受験、実質倍率は0.2ポイントアップの3.3倍でした。
女子校は男子校の倍以上の校数があり、全体では易化傾向が続いています。「私学発祥の地」と言われる神奈川県、ミッション系女子校が多いのが特徴の一つです。魅力ある教育、受験のしやすさを追求し、共学化やコース新設・改編、高校募集再開(新設)、特徴ある選抜方法の採用など、さまざまな動きが見られます。その改革が受験者増につながった一例が横浜女学院です。昨年から「アカデミークラス」「国際教養クラス」の2クラス体制とし、第二外国語(中国語・ドイツ語・スペイン語)の必修化、英語で学ぶための手法「CLIL」の導入など、特色ある教育が展開されています。今春ののべ受験者数は昨年から188名増え1,038名となり、県内女子校では洗足学園に次ぐ受験者数となりました。
共・別学校を見ていきましょう。桐蔭学園が共学の中等教育に改編されたため、別学(男女別々のクラスで学習する)は桐光学園1校となりました。共・別学校全体の実質倍率は昨年の2.38倍から2.65倍へとアップしました。【3】はのべ受験者500名以上の共・別学校の状況です。昨年からの受験者増順に並べています。

【3】のべ受験者500名以上の共・別学校の受験状況(増数順)

校名 募集定員 2019年度のべ受験者 のべ合格者 実質倍率
山手学院 200 1,653(381) 637 2.59
湘南学園 130 875(317) 252 3.47
青山学院横浜英和 160 1,158(310) 321 3.61
関東学院 200 1,086(253) 437 2.49
桐光学園・男子 200 825(228) 295 2.79
中央大学附属横浜 160 1,435(217) 436 3.29
※法政大学第二(男子) 140 1,087(121) 201 5.41
公文国際学園 150 398(121) 165 2.41
※法政大学第二(女子) 70 697(41) 110 6.34
神奈川大学附属 200 1,348(34) 424 3.18
日本大学 265 1,307(-244) 405 3.23
桐蔭学園中等教育 190 909(―) 265 3.43

※法政大学第二は共学ですが男女別に定員を設定した募集のため分けて集計しています

付属校、進学校それぞれの魅力

のべ受験者が1千名を超えた共・別学校は7校。そのうち6校は大学附属・系属校です。今春初めて1千名台となったのが青山学院大学の系属校、青山学院横浜英和。男女共学募集2年目は、のべ受験者が男子325名、女子843名、合格者は男子83名、女子238名でした。前身は成美学園で親しまれた女子校。1880年にアメリカ人宣教師が開校、1886年横浜英和女学校に改称されました。2014年に青山学院大学と系属校関係を締結し2016年に校名変更、2018年から男女共学化しました。系属校とは、大学の法人とは別の法人が運営するものの「大学と系属校とが合意した進学条件を満たすことで、一般受験者に比べて優先的に入学が認められます」(HPより)。青山学院横浜英和の場合は、推薦を希望する条件を満たした生徒は全員青山学院大学への進学ができます。
中央大学附属横浜も前身は女子校。1908年開校の横浜女子商業(1994年改称:横浜山手女子)が2010年に学校法人中央大学と合併し附属校になり、2012年から男女共学化されました。今春の大学進学状況は7割弱が中央大学進学です。
他の附属校の大学進学状況を確認しましょう。表にはありませんが県内共学校の最難関、慶應義塾湘南藤沢はほぼ全員が慶應義塾大学進学です。2016年に男子校から共学化した法政大学第二では、法政大学進学が9割以上です。日本大学は日本大学進学が約5割。日大への推薦を持ちながら国公立大学受験を可能にするなど、国公立・難関上位私大への進路も開いています。一方関東学院、神奈川大学附属は1割未満で、他大学進学に力を入れるいわゆる進学校として評価される学校です。
進学校である山手学院、湘南学園は昨年から大きく受験者を増やした学校です。山手学院は公立高校トップ校の併願校。首都圏難関上位私立大への進学、国際交流なども評価されています。湘南学園も国際教育に力を入れるとともに「湘南学園ESD」を掲げ特色ある教育を展開しています。湘南学園は新たに「ESD入試」を実施しました。小学校時代に取り組んだこと、湘南学園に入学したら取り組みたいことを本人が90秒以内のビデオに録り提出、試験当日は「SDGs」についての記述・論述試験をするというものです。10名の定員に対し39名が受験、13名が合格しました。
湘南学園の「ESD入試」は、実践する教育内容と連動した入試、同様に桐蔭学園中等教育の「AL入試」も同校が重視するアクティブラーニングと連動した入試です。算数・個別プレゼンテーションのほか、映像講義を見た後に思考力・判断力・表現力を問う出題がされます。49名が受験し15名が合格しました。湘南学園の「ESD入試」も桐蔭学園中等教育の「AL入試」も2月1日午前実施、同校第一志望の受験生に向けた入試と言えます。
首都圏私大の定員厳格化により早慶上智、明青立法中といった難関上位私大は難化傾向にあります。加えて新大学入試の不透明感も青山学院横浜英和、中央大学附属横浜、法政大学第二の人気につながっていると言えます。進学校では、進学実績にとどまらず中高6年間で推進する教育の特色が受験者増の背景にあるようです。そして、従来の4教科入試にとらわれない新たな入試形態は、その学校の「決意」と見て取ることができます。

2020年度入試トピックス

それでは最後に現時点で判明している来春の入試変更点を整理しましょう。【4】は各校の変更点をまとめたものです。

【4】2020年度入試トピックス(50音順)

学校 変更
青山学院横浜英和 ・帰国生入試を除き面接廃止
湘南白百合学園 ・2月1日入試(算数1科)新設
・面接廃止
・WEB出願に一本化
清泉女学院 ・2月5日「アカデミックポテンシャル入試」新設
→思考力・表現力・総合力を測る試験(10名募集)
聖ヨゼフ学園 ・共学化(男子募集開始)
函館白百合学園 ・東京会場入試廃止
聖園女学院 ・5次(2月5日)追加→算・国2科(10名募集)
・全日程WEB出願導入
麗澤瑞浪(れいたくみずなみ) ・東京会場入試新設

WEB出願は中学受験の常識となりました。またミッション系で多かった面接を廃止する学校が増えています。受験のハードルを下げる動きと言えます。聖ヨゼフ学園はカトリック校としては県内初の共学校となります。同校は国際バカロレアを推進しています。小学校では初等教育プログラムPMP認定(3歳~12歳)を受けており、2019年7月に中等教育プログラムMYP(11歳~16歳)の認定も受けました。教育の国際標準と言われる国際バカロレアを教育の中心にすえ特色化を図る同校の今後に注目したいところです。
地方の私立中学が行う1月入試(東京会場入試)は中学入試の第一ラウンドとして定着し、多くの受験生が利用しています。しかし土佐塾に続き、来春は函館白百合が撤退します。一方で新たに参入するのが、岐阜県の麗澤瑞浪中学校です。首都圏ではあまり知られていませんが、コアなファンに支えられる進学校の一つです。中学時代に親元を離れ寮生活を送る教育に魅力を感じるご家庭にとっては、選択肢の一つとなるでしょう。

以上、今春の入試結果と来春の入試トピックスをみてきました。グローバル化、終身雇用の崩壊を受け、中高6カ年教育でどのような力を身につけさせようとしているのか。私学はその命題にさまざまな解答を提案しています。中学受験は、我が子にとって最良の環境をご家庭の意思で選択できる機会。中萬学院グループはその選択と進路実現をこれからもサポートしていきます。

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