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CG’s EYE

学力向上進学重点校エントリー校指定と国際バカロレア続報

No.036 2018年08月01日

今回は前回お伝えした進学重点校の続報からお届けします。

エントリー校13校が指定、2020年度から全17校で特色検査

編集員 【編集員】

県教委は7月12日に学力向上進学重点校エントリー校13校を指定しました。前年度と同じ高校が指定されました。指定期間は2018年7月10日から2021年3月31日のおよそ3年間で、5つの指標に基づく実績に応じて年度ごとに本指定を行っていきます。

編集長 【編集長】

県立高校改革は高校を5つの地域に分けて進行している。今回の指定を地域ごとに整理すると【1】のようになる。

【1】県立学力向上進学重点校・エントリー校

地域種別 横浜北東・川崎地域 横浜南西地域 横須賀三浦・湘南地域 中・県西地域 県央・相模原地域
指定校 横浜翠嵐 柏陽 湘南   厚木
エントリー校 川和
多摩
希望ヶ丘
光陵
横浜平沼
横浜緑ヶ丘
鎌倉
茅ヶ崎北陵
横須賀
小田原
平塚江南
相模原
大和
編集員 【編集員】

指定期間中にエントリー校から指定校になるための5つの指標が【2】です。在学中の学力状況や「探究活動や全国規模の大会等での取組み」も指標の一つになっていますね。英語に関しては英検2級程度、CEFRではB1レベルですから決して高い、ということではありません。やはり難関大学への進学実績が指定に影響を与えるのでしょうか。

【2】学力向上進学重点校指定の5つの指標(県教委HPより転載)

  1. めざす生徒像を見据えて、「主体的・対話的で深い学び」の視点による教科指導等を展開し、高いレベルの思考力・判断力・表現力等の能力の育成を図るため、各学校において達成すべき学力水準を示している。
  2. 県教育委員会が実施する生徒学力調査(2学年)の結果により、高い学力を身に付けさせている。
  3. 生徒の7割以上が在学期間中に、英語検定2級程度以上のレベルを達成し、高い英語力を習得している。
  4. 生徒の探究活動や全国規模の大会等での取組みなど、学校の教育活動全体を通じて、豊かな人間性や社会性を育み、その成果をあげている。
  5. 全県立高校の中で、いわゆる難関と称される大学への現役進学において高い実績をあげている。
編集長 【編集長】

指定校・エントリー校の2018年度合格実績を見てみよう。国公立大では1校、早慶上智では2校の現役合格者数が現時点で確認がとれていないので参考値として紹介する。卒業生に占める国公立大学現役合格率を見ると、42.3%から4.3%まで大きな開きがある。同様に早慶上智現役合格を見ても、48.3%から7.6%までと開いている。このランキングは生々しいので具体的な高校名は避けておくけれど、国公立大現役合格率上位4校は指定校だね。エントリー校で最も高い国公立大現役合格率と指定校の差は1.8ポイントとなっている。ちなみにこのランキングから、県立中等教育2校が県立校のトップランクに位置することがよく分かる。ところで、5つの指標のうち(1)の文章が2015年公表の推進計画とちょっと違うのに気づいたかな?

編集員 【編集員】

えっ?気づきませんでした。資料を見返してみます。

めざす生徒像を見据えて、課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)のある教科指導等を展開し、高いレベルの思考力・判断力・表現力等の能力の育成を図るため、各学校において達成すべき学力水準を示している。(2015年12月公表(案))

なるほど、「課題の発見・解決に向けた…」のくだりが「主体的・対話的で深い学びの視点による」と言い換えられています。新しい高校学習指導要領に沿った表現にしたということでしょうか。

編集長 【編集長】

おそらくそうだろうね。実はこの文章も、2015年9月公表の素案では違っていたのを覚えている?

編集員 【編集員】

確か特色検査の実施が入っていたと記憶しています。それが12月の公表ではなくなっていました。

めざす生徒像を見据えて、入学者選抜において総合的な能力や特性をみる特色検査を実施し、質的・量的に充実した教科指導等を展開している。(2015年9月公表素案)
編集長 【編集長】

そう。今回、エントリー校含む進学重点校すべてで2020年度入試から特色検査を実施することになったのも、以前から検討されていたことのようだね。

編集員 【編集員】

その特色検査は前回触れた共通問題・共通選択問題による実施です。2019年度は湘南・横浜翠嵐・厚木・柏陽の指定校4校に加え、エントリー校の希望ヶ丘・平塚江南・横須賀が共通問題・共通選択問題を使用します。そして2020年度は全17校すべてで共通問題・共通選択問題を使用した特色検査となります。2019年度の特色検査での各校の評価の観点が【3】です。

【3】2019年度共通問題・共通選択問題による特色検査評価の観点

学校評価の観点 湘南 横浜翠嵐 厚木 柏陽 希望ヶ丘 平塚江南 横須賀
創造力及び想像力        
科学的思考力・判断力・表現力      
情報活用能力
論理的思考力・判断力・表現力

(県教委資料をもとに中萬学院作成)

編集長 【編集長】

17校の今春の入試を振り返ると、17校への志願者が7,720名、受験後取消を除く受験者数が7,372名、合格者5,391名、実質倍率1.37倍だった。2年後には7千名を超える中3生が共通問題・共通選択問題の特色検査を受験するわけで、特色検査は中学生にとっての学力到達目標としてますます重要になると言えるね。

編集員 【編集員】

特色検査を共通問題・共通選択問題で実施するのはなぜでしょう。

編集長 【編集長】

推測だけれど、入試問題の作成にはぼう大な労力が必要になる。2015年の実施計画素案から特色検査の文言がなくなったのは、パブリックコメント以外にも、高校の先生方への配慮があったのだろう。共通問題・共通選択問題で実施すれば、各校が作成する現在の方法より先生方の負担軽減につながるというのが1点。もう1点は「進学重点校」という共通した特色を踏まえれば特色検査を共通問題にしてもおかしくないし、県立の進学重点校が求める学力像がより明確になるという考えだと思う。来年の特色検査問題に注目しよう。

着々と国際バカロレアへの取り組みが進行中

編集員 【編集員】

最後に、6月のCG's EYEで特集した県内の国際バカロレアについての続報です。来春スタートする横浜国際高校国際バカロレアコース(仮)での特色検査(自己表現検査)問題のサンプル問題が発表されました。国際バカロレアコース(仮)の特色検査の評価の観点は①論理的に考え表現する力②課題を発見し解決する力③多様な考えを理解する力の3つで、検査時間は60分です(番号は編集部)。サンプル問題は県教委ホームページ で見ることができます。
例題1では2015年に国連が採択した持続可能な17の開発目標の中から、最も関心を持つものを1つ挙げ、その理由を200字以上400字以内の日本語で記述(①)します。またその実現に課題となることと課題解決の方法を200字以上400字以内の日本語で記述(①②)します。
例題2では2人の生徒が英語の授業で「動物園は必要か」について英語で述べた意見に対し、それぞれの意見に触れたうえで自分の考えを具体的に100語以上150語以内の英語で記述(①③)します。

編集長 【編集長】

サンプル問題を示してくれるのは、受験生にとっても私たちにとってもありがたいことだね。日本語記述、英語記述ともに「論理的」に組み立てるものだから、トレーニングを積むことで力をつけることができる。

編集員 【編集員】

そして新たな動きがありました。聖ヨゼフ学園中学・高校が2020年度中学入学生から男女共学化します。これも国際バカロレアと密接に関連したもののようです。

編集長 【編集長】

聖ヨゼフ学園の小学校は、今年の1月に日本の小学校として初めて「国際バカロレアPYP校」として認定された。現在MYP認定校への手続きも進めている。PYPは3~12歳、MYPが11歳~16歳、DPが16~19歳のプログラム。すべてが完成すると卒業資格が得られる学校としては、国内初の小・中・高一貫のIB校となるね。

編集員 【編集員】

もう1校が私立三浦学苑高校です。2020年に国際バカロレア認定校となるべく準備が進んでいます。2018年現在、卒業資格が得られるのは法政大学国際高校1校のみですが、来年は県立横浜国際高校が、そして2020年には三浦学苑高校が認定校になるなど、今後国際バカロレアへの関心は高まっていくのでしょう。

編集長 【編集長】

ということで、tvk「CHUMAN進学ナビステーション」の10月放送では、法政大学国際高校のIBコースを紹介する予定だ。海外大学の入学資格が得られるというだけでなく、その国際標準の教育内容にこそ魅力があると私は思っている。今から取材が楽しみだ。

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