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CG’s EYE

急ピッチに進む教育改革Vol.13

No.028 2017年12月01日

今回のCG’s EYEは、新学習指導要領にもうたわれる「プログラミング教育」と「思考力」について確認していきましょう。

プログラミングは教科ではない

まず、プログラミングは教科として行われるわけではありません。また、プログラミングの知識やスキルを習得することを目的にしているわけでもありません。小学校学習指導要領解説で記述されるプログラミング教育については、次のようにまとめることができます。

【1】小学校プログラミング教育のポイント

学習を進めるうえでも、社会に出て仕事をするうえでも、コンピュータは不可欠なツール。小学校段階からキーボードで文字を入力したり、インターネットから必要な情報を集めたり、コンピュータソフトを使ってデータをまとめたり分析したりすることに慣れていきましょう、というのが柱の一つです。

そしてもう一つの柱が、論理的思考力を高めるということです。プログラミングは、どうすれば自分の考える動きや結果になるかを記号(指令)を組み合わせながら進めていくものです。希望通りのものにするには試行錯誤が必要になります。「あーでもない、こーでもない」と考えたり実際にやってみたりすることで、理想の結果にたどりつくわけです。

ですから、プログラミングに求められる思考力は、何もプログラミングでしか養えない、というものではありません。算数であれば公立中高一貫校適性検査や私立中学入試問題でも頻出の図形問題や場合の数などの問題に粘り強くチャレンジすることで、論理的思考力は身についていきます。

プログラミングの魅力は、そういった従来のいかにも「勉強」ではなく、ロボットや電子機器を扱う楽しさの中で身につくことにあるでしょう。先月行われた「秋の学習祭inみなとみらい」での「ロボットプログラミング体験」(協力:学研エデュケーショナル)、「little Bits テクノくんからの6つの指令」(協力:株式会社コルグ)でも、子どもたちが楽しみながら試行錯誤している姿が印象的でした。

■「秋の学習祭inみなとみらい」での体験の様子

批判的思考力って?

もう一つ注目しておきたいのが、21世紀型能力で示されている「批判的思考力」です。「クリティカルシンキング(critical thinking)」とも言います。「社会の期待に応える教育改革の推進」(2013年中央教育審議会)の「教育改革7つのポイント」で「クリティカルシンキングを重視した(大学)入試への転換」という表現も見られました。

“批判的”というのはあまり良い響きを持っていませんが、実は医療の現場で発達した思考法です。たとえば熱が出て病院に行ったとします。
「どうしました?」「熱が出ました」「はやっているからカゼだね」

ろくに診察もせず、思い込みで診断されては困ります。そうではなく本当に「ただのカゼ」なのかと疑って、原因を特定するためにさまざまな角度から探っていく。そして最も適切な治療を行う。お医者さんが日々行っているのが、この批判的思考です。ビジネス界や教育界でも重視されるようになり、関連図書も出されています。

【2】「21世紀型能力」国立教育政策研究所

批判的思考法を少しだけ体験するため、次の問いに答えてみましょう。

問:数学の成績を上げるにはどうすれば良いか?

①イシューの特定「何を解決する?」

「もっと勉強する」「先生に聞く」…。答えを出す前にまずやることがあります。それは解決すべき問題(イシュー)を特定することです。「数学の成績」とはなに?「上げる」というのは具体的にどういうこと?これらをまず明らかにします。たとえば「2年生前期3の数学内申点を2年生後期に5に上げるにはどうすれば良いか?」 というように、解決すべき課題を明確にすることから始めます。

②問題点の特定「どこが悪い?」

次にするのが「どこが悪いのか?」です。「5」が取れないのはどこに問題点があるのかを特定します。内申点のつく要素(定期テスト結果・授業中の態度積極性・ふだんの小テスト・提出物など)を「モレなくダブリなく」挙げていきます。その中から問題点を特定します。たとえば、「提出物の内容が悪い」などです。

③原因の分析「なぜそうなの?」

問題を特定したら、それがなぜ起きたかを考えます。「whyは3回問え」などの言葉がありますが、原因を探るのは難しいことです。「勉強が足りないからだ」など、思い込みで深く考えずに答えを出そうとするからです。思い込みは、ふだんの生活やビジネスでも陥りやすいワナですね。

④解決策「どうする?」

ここまでたどりついて初めて、ではどうするかを考えます。原因を解決できる手立て(「打ち手」「オプション」)をいくつも挙げていきます。原因と直接結びつく手立てを考えることが重要です。 批判的思考法を使うことで、内申5を取るためには「もっと勉強する」という打ち手ではなく、たとえば「レポート術を学ぶ」「遊び時間を削る」ことで「良い提出物を作成する」という打ち手が導かれました。内申5をとれる実現性、具体性が高まったわけです。

そして今回の課題解決には、自分を見つめる力が必要でした。それを「メタ認知」と言います。21世紀型能力にも示されているものです。

確かな思考法を身につけていく

21世紀は「多様な人々と協働していく」社会。目的達成に向けてお互いに自分の考えを的確に伝え合い、検討していくことが求められます。「批判的思考力」は課題解決の思考法であると同時に、自分の考えを説得力をもって伝えるために不可欠な力と言えます。

批判的思考力、クリティカルシンキングは、ふだんから意識しトレーニングすることで養えると言います。また、今後増える「アクティブ・ラーニング」の質を高める上でも身につけていきたい思考法と言えるでしょう。

私たちが受けた学校教育は、やや乱暴ですが知識をどんどんためていくことに重きが置かれました。しかし、今重視されるのはまさに「考える力」をつけること。小学校時代にプログラミングなどを通してコンピュータ・ICTに親しみながら論理的思考力の下地を作り、中・高・大学教育を通して論理的・批判的思考力を高めていく。それが21世紀をたくましく生きる力となるというわけです。

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