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CG’s EYE

大学進学の現状と大学3ポリシー

No.026 2017年10月02日

今回のCG’s EYEは、大学進学の現状と大学3ポリシーについてみていきましょう。

大学3ポリシーが義務化

【編集員】昨年の3月末に中央教育審議会が、大学教育の「三つの方針」いわゆる3ポリシーの策定と公表、運用のガイドラインを公表し、今年の4月から義務化されました。各大学・学部がどんな学生を求めどのような方法で選抜するかのアドミッションポリシー、どのように学修させるかのカリキュラムポリシー、どのような力を身につけたかのディプロマポリシーを明示しホームページなどで公開しています。

【編集長】高大接続改革は大学入試に目が行きがちだけど、この3ポリシーは大学・学部の骨格を伝える重要な取り組みだよね。3ポリシーが大学・学部の魅力を伝えるものとしてより分かりやすく表現されていくと、高校生の大学・学部選びにも影響を与えるかもしれないね。

【編集員】確かに大学名や難易度、環境など固定化されたイメージを脱却するチャンスかもしれません。

【編集長】保護者世代が大学生だった頃と今とでは違うことがたくさんあるけれど、意外と知られていないよね。実は私も自分の子どもが大学生になって、びっくりすることだらけ。授業は少人数のゼミ形式が中心でまさに「アクティブ・ラーニング」だし、海外研修もいろいろとある。そういった取り組みやアピールポイントを3ポリシーに沿って文章だけでなく動画なども使いながら伝えてくれると、高校生だけでなく保護者や教育関係者にとってもありがたいな。

【編集員】まさに広報パーソンの腕の見せ所ですね。

【1】高校・大学教育・入学者選抜の一体改革イメージ

大学進学率は今年も全国第3位、県立高校大学現役進学率トップは90.3%の相模原高校

【編集員】その大学進学について神奈川県と全国の資料を3つ用意しました。【2】と【3】は県教育委員会が8月に公表した県内高校生の進路に関するもの、【4】は文部科学省が8月に公表した全国の高校生の進路状況です。

【2】県立高校大学学部現役進学率 2017年度卒業生

学校名 卒業者総数 大学(学部)
相模原 278 251 90.3%
横浜平沼 273 239 87.5%
新城 271 228 84.1%
松陽 233 196 84.1%
追浜 240 201 83.8%
横浜緑ケ丘 280 232 82.9%
座間 278 228 82.0%
横浜栄 276 226 81.9%
川和 357 291 81.5%
希望ケ丘 353 286 81.0%
市ケ尾 393 318 80.9%
海老名 398 322 80.9%
柏陽 314 254 80.9%
麻溝台 355 284 80.0%
県立高校計 38,628 19,597 50.7%

※…学力向上進学重点校エントリー校
(神奈川県教育委員会「平成28年度公立高等学校等卒業者の進路の状況」)

【編集員】神奈川県の大学学部進学率は、今年も全国第3位の57.1%でした。県立高校のうち大学・学部への現役進学率が80%以上の高校をまとめたのが【2】です。14校あるうち、学力向上進学重点校にエントリーしている高校が6校入っています。他のエントリー校の現役進学率は横浜翠嵐が69.8%、湘南が57.1%などでした。エントリーは全部で17校ですが、その中から10校程度が2018年度から指定を受ける予定です。

【編集長】大学進学に対する考え方が、現役進学率や進学先にあらわれている。良し悪しではなくそれが校風になっているよね。中学生は、自分がどんな高校生活を送りたいのか、そして将来どういう進路を目指したいのかを見すえ、自分の高校生活のイメージに合った高校選びをしてほしいと思う。

【編集員】【3】の「県内高校生の卒業後進路」を見ると、大学入学志願者のうち浪人する割合は7%程度です。30年前は志願者の4人に1人が浪人していましたから、大学受験の姿が変わっていることが分かります。

【編集長】大学全入時代の中、受験方法の多様化も現役進学率を押し上げている。大学・学部入学者数は過年度生含め全国で60万8,233人、そのうちAO入試や推薦入試での入学者が26万5,378人で、入学者全体の43.6%に上る。【4】はそれぞれの選抜方法での入学者割合をまとめたものだけれど、私立大学では一般入試よりAO・推薦入試での入学者のほうが多いのが分かる。また、国公立大でのAO入試・推薦入試の実施大学・学部数は2016年度入試では236大学649学部と、2010年度から19大学53学部も増えている。入試方法の多様化は私立大学のみならず国公立大学でも見て取れるね。そして、2020年度からの新大学入試では、AO入試改め「総合型選抜」の募集人員に制限を設けないこと、推薦入試改め「学校推薦型選抜」は現行通り入学定員の50%以内と定められた。

【3】県内高校生の卒業後進路

【4】2016年度大学入学者選抜実施状況

学力の3要素を身に付ける

【編集員】以前、大学生の学力低下問題から、学力テストを行わないAO入試・推薦入試の在り方が問題視されました。大学入試改革ではAO入試や推薦入試の廃止もあるのかと思っていました。

【編集長】そうだね。ただ、ここで言う「学力」は主に知識面を指すことが多かった。そうではなく学力の3要素、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性」を測る試験という点では、一般入試にも課題があるというのが、今回の大学入試改革だ。2014年の中央教育審議会答申では次のように指摘している。

「あらかじめ設定された正答に関する知識の再生を一点刻みに問い、その結果の点数で選抜する評価から転換しきれていない」。その理由は「点数のみに依拠した選抜を行うことが『公平』であるという、従来型の『公平性』の観念が社会に根付いているからだ」。

そして入試だけでなく、高等学校教育、大学教育にも課題があるというのが高大接続改革の柱だった。

「『高大接続』の改革は、『大学入試』のみの改革ではない。その目標は、『大学入試』の改革を一部含むものではあるが、高等学校教育と大学教育において、十分な知識・技能、十分な思考力・判断力・表現力、及び主体性を持って多様な人々と協働する力の育成を最大限に行う場と方法の実現をもたらすものである」。

【編集員】高等学校教育改革は次期学習指導要領で、大学入試と大学教育改革は各大学が冒頭の3ポリシーで明示するというわけですね。

【編集長】そうだね。高等学校教育では学力の3要素を身につけるために「アクティブ・ラーニング」を積極的に導入することが柱の一つになっている。大学の3ポリシーガイドラインでは次のような記述がある。

◆アドミッションポリシー
「『学力の3要素』を念頭に置き、入学前にどのような多様な能力をどのようにして身に付けてきた学生を求めているか、入学後にどのような能力をどのようにして身に付けられる学生を求めているかなど、多様な学生を評価できるような入学者選抜の在り方について、できる限り具体的に示すこと」。 「どのような評価方法を多角的に活用するのか、それぞれの評価方法をどの程度の比重で扱うのか等を具体的に示すこと」。

◆カリキュラムポリシー
「能動的学修の充実等、大学教育の質的転換に向けた取組の充実を重視すること」。 「特に初年次教育については多様な入学者が自ら学修計画を立て、主体的な学びを実践できるようにする観点から充実を図ること」。

【編集員】「能動的学修」は「アクティブ・ラーニング」のことですね。アドミッションポリシーの「多角的に活用」というのはどういうことですか?

【編集長】総合型選抜(現行AO入試)では本人の記載する資料、学校推薦型選抜(現行推薦入試)では学力の3要素に関する評価の記載を活用することが定められ、さらに調査書等の出願書類以外に次のいずれか一つは活用することが定められた。

大学が実施する評価方法

  1. 自らの考えに基づき論を立てて記述させる(小論文等)
  2. プレゼンテーション
  3. 口頭試問
  4. 実技
  5. 各教科・科目に係るテスト
  6. 資格・検定試験の成績 など

大学入学共通テスト

さらに一般選抜(現行一般入試)でも、調査書や志願者本人が記載する資料(高校時代の探究的な学習成果、各種大会や顕彰の記録等)の積極的な活用が示されている。それは「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するためだ。

【編集員】一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜、いずれの選抜方法でも学力の3要素をしっかり測りなさい、というわけですね。

【編集長】「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」はペーパーテストで測れるけれど、「主体性」は難しい。神奈川県公立高校入試で受験生全員に面接を課しているのはそのためだったね。受験者規模が大きい大学入試でどう「主体性」を測っていくか、大学関係者がいちばん苦慮する点だ。でも、一つの「モノサシ」ではなく、いろんな「モノサシ」で受験生を見ていけば、まさに多様な学生を集めることができるはずだ。大学側の取り組みに期待したいね。

【編集員】子どもたちにとってはどうでしょう。

【編集長】もちろん良い方向に向かっていると思う。「主体性」は、現行学習指導要領でもうたわれているものだ。日々の学習や経験から自分の興味関心を広げていくことを、これからも意識していけば良いと思う。ポイントはそれを「見える化」していくことだろうね。アニメを例にすると、自分が見た作品をリスト化したり、お気に入りのアニメーターや声優について調べてみたり、海外のアニメ事情を調査してみたり。「見える化」によってそれが自分の「資産」にもなっていく。中学・高校6年間は、言葉を換えれば自分の「資産作り」。自分にしかできないものだ。そしてその資産を生かせる、自分を高め伸ばせる進路をぜひ見つけてほしいと思う。大学進学であれば3ポリシーがその参考になるはずだ。

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