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CG’s EYE

大学受験セミナー(主催:中萬学院 大学受験指導事業部)
青山学院大学学長・三木先生講演会ダイジェスト
「20年先の社会を見据えて グローバル化時代の学び方」

No.025 2017年09月01日

2017年6月17日(土)に開催された「大学受験セミナー」(主催:中萬学院 大学受験指導事業部)。今回は青山学院大学学長・三木先生の講演会ダイジェストをお届けします。
青山学院大学学長・三木先生

青山学院大学学長
三木 義一

1950年生まれ。静岡大学教授、立命館大学教授等を経て、青山学院大学法学部教授に就任。法学部長、法学研究科長を歴任し、2015年12月より青山学院大学学長に就任。元政府税制調査会専門家委員会委員であり、現在は租税法学会、日本税法学会、日本財政法学会等に所属している。

世界を変えられる可能性

世界を変えられる可能性

20年先の社会、皆さんの将来は、想像を超えた大きな可能性に満ちています。確かに、いまや日本は少子高齢社会を迎え、今後は国内市場の縮小が見込まれます。日本企業の海外進出や外国人雇用者の数はますます増加し、またAI(人工知能)が担う仕事の分野も広がっていくことでしょう。日本での雇用の枠が減り、これまで以上に国内で希望の職に就くことが厳しくなるかもしれません。

しかしながら、それは国という狭い枠を越え、新たなことを成し遂げるチャンスであると言い換えられます。2016年に囲碁AIが人間に初勝利し話題となりましたが、いまやAIはこれまで不得手とされてきた「認識」の壁をも越え、急速な発展が期待されています。手足となる技術、AIが発達したということは、あとは発想の組み合わせ次第で様々な新しい発明を生み出せるということです。皆さんのアイデア次第で、社会を、そして世界を変えられるかもしれないのです。そのような大きな可能性が皆さんの未来にはあふれています。

多文化社会で生きる、そのために

多文化社会で生きる、そのために

では、この時代に皆さんにはどのような力が求められるでしょう。それは、共に支えあい、それぞれが自分の得意なことを発揮でき、生き生きと『活動する(働く)』力。自律した個人として、自律的に多様なスタイルで『働く』力。そして、日本語や日本社会のほか、海外の言語や文化をも理解し、多文化と共生できる力です。

ひとつ例を挙げましょう。私は税法を専門としていますが、新人の税理士たちに「日本・韓国・イギリス・ドイツのうち、どの国が最も年間の税金に関する裁判数が少ないか」と聞くと、圧倒的に日本または韓国が挙がります。その理由は、「『アジア圏の人たちはあまり争いたがらない』というイメージがあるから」だそうです。しかし、実際は多い順にドイツ(約90,000件)、韓国(約3,000件)、日本(約300件)、イギリス(約30件)と、4カ国のなかでイギリスが最も少ないのです。ただし、それは争いが好きか・嫌いかという単純な話ではなく、各国の裁判制度の違いによります。イギリスは裁判費用が日本よりも高額で、敗訴の場合には相手の費用も支払わなければなりません。つまり、確実な勝利が見込まれた場合にしか裁判にまで至らないため、件数も少ないのです。また、日本では納税者が納税額を申告し、税務署の指摘を受けて修正するのが大半ですが、ドイツでは税務署が納税額を計算します。そのため、税額に納得できず納税者が裁判を起こすというケースが、日本よりもはるかに多くなるのです。

我々は、つい国や民族をそのイメージでとらえてしまうものです。しかし、今後ますますグローバルな働き方が前提となり、様々な文化背景をもつ人々と関わる以上、勝手な思い込みではなくその背景の理解が重要になります。たとえば本学の地球社会共生学部では、社会科学の幅広い学問分野を学び、世界の人々と共生し協働できる力を身につけるために、タイ・マレーシアを中心とする東南アジア地域への半期の留学を必須としています。また、国際交流をさらに活性化させるため世界35カ国120校の協定校と提携し、国際寮も新設することで多くの留学生の受け入れを促進しています。もちろん国外だけでなく、国内の地域理解も同様に重要です。本学でも相模原市をはじめとする12の国内都市と包括連携協定を締結しています。皆さんが国際社会で活躍しうる力を身につけ、地域社会で活躍し、そして日本を活性化させていくことを我々は大いに期待しています。

「共通語」としての英語力

「共通語」としての英語力

さて、もうひとつ皆さんが身につけておくべきこと、それはやはり英語力です。確かに、昨今の自動翻訳システムの発展は目覚ましいものです。しかし、いまや英語は世界の人々とコミュニケーションするための「共通語」です。私が以前ドイツでヒアリングを行った際も、主に使用したのは英語でした。英語さえ分かれば世界中で会話が成立する、そういっても過言ではないでしょう。今後過去にないほど様々な国の人が日本を訪れ、そして皆さんが国という枠を越えて働く以上、英語力が絶対条件となるのは間違いありません。

そのような流れを受け、昨今日本の大学でも「英語授業化」を促進しています。たとえば本学の国際政治経済学部では、60科目を超える多彩な「英語講義科目」を設けています。国際政治学や国際経済学などの専門科目を英語で学ぶほか、留学先で英語環境にスムーズに溶け込むための準備など、海外の大学院進学を視野にいれて学ぶことができます。また、文学部英米文学科では語学の授業に加え、専門科目を英語だけで学ぶプログラムや、プロの通訳者・翻訳者を目指す専門的なプログラムも設けられています。

このような動きは文系の学部に限りません。本学の理工学部では、科学者・技術者に必要な英語力を身につけるための「English Core」、海外留学を幅広くサポートし、世界で活躍できる科学者・技術者を育成する「理工学国際プログラム」、1年次から参加できる「Study Abroad」などのプログラムを行い、留学サポートも充実しています。AIのさらなる発展が期待されるなか、大手企業をはじめ多くの企業が理工的センスのある人材、特にいわゆる「リケジョ」を強く求めています。本学の理工学部出身者も「専門的な仕事に就けてうれしいです、後輩の女子学生にも理工学部をすすめます」と話していました。これからは英語「を」学ぶではなく、英語「で」専門的な考えを学び、取り組み、社会的に暮らせることが求められることでしょう。そのような意識を持って、ぜひ皆さんにもいま英語の勉強に取り組んでいただけたらと思います。

20年先の社会を見据えて

20年先の社会を見据えて

皆さんがこれから何を本気で成し遂げるか次第で、皆さんの将来は果てしなく変わっていきます。大変努力のしがいがあり、それは受験勉強においても同様です。いまの努力や自己規律が、未来の楽しく充実した仕事につながっていくことでしょう。どうかそれを忘れずに、ぜひ20年先の、そしてさらにその先の未来を見据えて励んでください。ご清聴ありがとうございました。

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