入試最前線
2009年6月22日号
>> 「2009年度 神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」のポイント - 独自入試編 -

4月下旬、神奈川県教育委員会は2009年度に実施された公立高校入学者選抜の結果を公表しました。前回の全県共通問題に続き、今回は独自入試編をお送りします。

■ 2009度独自問題実施校合格者平均点

〔表〕 09独自入試実施校合格者平均点(県教委発表)
 高校名
実施回数
 実施教科(各50点満点)
英語
数学
国語
 横浜翠嵐
5回目
37.2
29.3

38.3

 平塚江南
5回目
34.6
33.1
38.2
 横浜国際
5回目
38.6
-
 -
 小田原
4回目
35.0

29.1

33.2
 鎌倉
4回目
36.7
28.6
 - 
 湘南
3回目
42.9
40.0
30.2
 柏陽
3回目
40.9
31.7
35.9
 横須賀
3回目
35.8
37.0
35.0
 多摩
2回目
37.3
36.5
34.8
 光陵
2回目
31.9
29.1
43.5
※各校ともに表記の教科以外は共通問題を使用。
※横浜国際の実施回数は旧外語短大付属からの通算。

公立高校入学者選抜の結果の中で県教委が発表している独自入試実施校の合格者平均点は右の表のとおりです。2009年度実施校は2008年度と同じく、全部で10校。2009年度は英語の一部と数学の一部の問題で、実施校共通の出題が行われるようになったことが大きな変更点です 。独自入試は実施から5年が経過しました。現在、実施10校の問題すべてに共通していえることは、3年後の大学入試に向けて基礎学力を試す内容であるという点です。それは、独自入試実施校が2007年度に学力向上進学重点校の指定を受けたことからもうかがえます。
県内公立高校生の大学・短大等への現役進学率は60%を突破。2人に1人以上が進学し、さらに難関上位大学志向が高まる中、進学重点校は独自入試を通して高校入学段階で高い素養を持った生徒を選抜しようとしています。その素養とは、高い論理的思考力や読解力、そして表現力です。独自入試レベルの学力を身につけることは、最終的な高校進学先にかかわらず、将来の大学受験においても大きな財産になるといえるでしょう。これから受験に向かう中学生の皆さんにも、独自入試レベル到達を目標におき、将来の可能性を広げてほしいと願います。 ここからは各教科の先生による2009年度出題傾向分析です。ぜひ学習の参考にしてください。


 求められるのは英文を日本語に訳すことなく、英語のまま直接理解する力

【1】 今年度の独自入試問題の特徴について

≪2009年度のポイント≫
■リスニング・・・今年度より独自入試実施校の共通問題として実施。
■文法・・・語彙・適語選択・語順整序に加え、文法的な誤りを見つける正誤問題が加わりました。ただし、大設問での配点は減少傾向にあり、長文読解の中に文法問題を入れる学校が増えています。
■読解・・・共通問題の問5・問6に相当する問題。共通問題と異なり、図や表はなく、文章のみで情報処理を行う問題です。英文をパラグラフごとに分解し、論理的に筋道の通る文章に並び替える問題が主流で、私立や都立の出題傾向に似ています。
■長文読解・・・今年度より大設問1題(配点8点)が独自入試実施校の共通問題となりました。この問題が加わったことにより全体の単語数が増加。小説文はなくなり、情報処理を目的とした対話文や説明文が内容の中心となりました。
■英作文(語順整序を含む)・・・都立のように30語以上の英作文を要求するのは横浜国際のみ。その他は選択肢の多い語順整序か部分英作文で、解答が多岐に渡らない工夫がされています。

【2】 例年の問題との比較
■リスニングの難度がアップ
読まれるスクリプトが長文化し、会話をしている人物の情報を特定することが困難に。また、月日や数字などの情報を聞き取る実用的な情報処理が要求されるようになりました。
■語順整序の難度がアップ
共通問題が5つの選択肢から4つを選んで並び替えるのに対し、独自では8つの選択肢から6つ、または7つから5つを選んで並び替える形式で選択肢が増える傾向にあります。
■長文読解の単語数増加
昨年度は平均約2,000語だった単語数が、今年度は10%増の平均約2,200語になりました。08年度は、2,000語を超える学校は10校中4校だったのに対し、09年度は7校に増えました。この原因は共通問題の長文(561語)が加わったためと考えられます。長文の内容自体は、情報処理の色が強く、パラグラフごとに設問に答えるものが多いため、解き易い問題になっています。


【3】 対策
現在中学3年生が使用している英語の教科書一冊分の語数はおよそ2,000語。2009年度独自問題の英文の平均語数も約2,000語を超えています。つまり多くの独自入試では、一年間で学ぶ教科書一冊分の英文を制限時間内で解かなければならないことになります。そこで求められる能力は、「英文を日本語に訳すことなく、英語のまま直接理解する力」つまり英語を通じての読解力(速読力)で、センター試験で求められる力と同じです。すべての独自入試は3年後の大学入試に向けて基礎学力を問う問題であるととらえてよいでしょう。対策としては、「中1から中3までの単語や文法事項を満遍なく身につけておくこと」「英語を英語のまま理解できる速読力を訓練しておくこと」と、学校の出題傾向が定まっていないため、「あらゆる公立高校の過去問題を解いておくこと」が必要です。


 

 必要なのは与えられた条件を整理し論理的に考える思考力

数学の独自問題では以下のような学力が求められているといえます。
(1) 中学校で学習する単元全般についての基礎学力
(2) 迅速かつ正確な計算力
(3) 与えられた条件を整理し論理的に考える思考力


● 今春の独自入試で出題された設問数及び出題範囲は以下のとおりです

 〔表①:独自入試の設問数と平均配点〕
 高校名  設問数と平均配点
 横浜翠嵐
18問〔2.8〕
 
 平塚江南
19問〔2.6〕
 途中記述1問
 鎌倉
17問〔2.9〕
 
 小田原
18問〔2.8〕
 
 湘南
18問〔2.8〕
 作図記述2問
 柏陽
17問〔2.9〕
 途中記述1問
 横須賀
18問〔2.8〕
 途中記述1問
 光陵
18問〔2.8〕
 
 多摩
18問〔2.8〕
 
 平均
17.9問〔2.8〕
 ※含 記述証明1問

今年度の独自入試では【関数】・【図形:記述証明】の設問 が、独自実施9校で同一の共通問題として出題されました。 各校の設問数は〔表①〕のとおり、ほぼ18問、1問あたりの平均配点は約2.8点となっています。また、平塚江南・湘南・柏陽・横須賀の4校では、記述証明以外にも途中経過を記述する設問や作図が出題されており、昨年同様、【問1】・【問2】といった計算・小問総合(1~2行の文章題)において迅速かつ正確な計算力が必要とされていることがうかがえます。出題範囲については共通入試に比べ【図形単元:平面図形および立体図形】の比率が全体のほぼ半分を占めていることが〔グラフ①〕からわかります。また、学年別の出題比率については〔グラフ②〕にあるように、圧倒的に中学3年生範囲からの出題が多い中、【規則性:光陵 問6】・【整数の性質:多摩・横須賀】といった算数から数学へ積み上げてきた内容からの設問が出題されていたことも特徴の一つと言えるでしょう。

■ 出題例①:2009年度 多摩 問1(キ)・2009年度横須賀 問2(イ)

● 与えられた条件を整理し論理的に考える

今年度は〔連立方程式の文章題〕が2校で出題されました。【柏陽 問5】は、やや長めの問題文から立式に必要な条件を正確に読み取らなければなりません。また、【横浜翠嵐 問1(カ)】で出題された『割合(増減)に関する文章題』は、昨今の中学校教科書ではほんの数題しか掲載されていないものです。幅広く、学習してきた単元については漏れなく見直していく姿勢が大切です。

■ 出題例②:2009年度 柏陽高校 問5


9校中7校で大設問として出題された【確率】において、昨年同様に手順が複雑化していたことも今年度の特徴として挙げられます。座標平面上に3点を定める【鎌倉:問3】、同じく5点を定める【光陵:問3】などに代表される、問題を解く上でのポイントが絞込みにくく作業のみで解こうとすると相当な時間を要する設問が散見されています。特に、座標を5点定める【光陵:問3】においては、〔相似の基本形〕・〔高さの等しい三角形の面積比〕・〔平行線と線分の比〕といった図形の要素を利用することに気付かず正解までたどり着けなかった受検生も少なくなかったと思われます。こういった設問を見ても、『複数の単元が融合された問題』を数多く解き、条件を整理する練習を積み重ねていくことが必要不可欠だと言えるでしょう。

■ 出題例②:2009年度 光陵高校 問3


 

 まとまった文章を正確に、速く読み取る力が求められています

国語では、大きく、文章内容全体を理解する力をはじめとし、文章中や選択肢の表現を言い換えて考える力や、問題の条件にしたがって論理的に表現する力が求められています。また、独自問題の文章量は、昨年に比べて全体の文章量が減った高校はあるものの、例年どおり約10,000字(原稿用紙で20枚)前後となっており、「まとまった文章を正確に、速く読み取る力」も求められていることがわかります。それでは実際の出題例をとりあげながら独自問題の特徴を見ていきましょう。

(1) より広範な知識力が求められています
単なる漢字や知識の暗記学習ではなく、意味理解を伴った「使える語彙」の力が求められているといえます。

 
○ 漢字の書き取り・・・・・・ 平塚江南 「創建」 柏陽「不文律」 横須賀「深窓」
○ 知識問題・・・・・・・・・・・ 柏陽 「理非曲直」「曲学阿世」
○ 文章読解に絡めて・・・・

横須賀 「試金石」  小田原 「ご破算」「雪辱戦」

(2) 細部理解を問うものにとどまらず、以下のように、文章全体の理解を前提とする出題がしっかり定着したといえます
 
○ 「作品中の人物像を理解する力」  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 柏陽 問2(イ)(エ)
○ 「文章内容を理解したうえで、問われていることを的確に捉える力」  ・・・・・・・・・・・・・・・・ 柏陽 問3(オ),湘南 問1(カ),横浜翠嵐 問1(ウ)
○ 「本文の具体的な部分を抽象化できる力」, 「本文の抽象的な部分を具体化できる力」・・・

横須賀 問3(カ)(キ
湘南 問1(エ)(カ)(キ)

○ 「筆者の主張や文章内容全体を理解する力」  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 横浜翠嵐 問2(カ)
(3) 本来の「条件記述」の問題に大きな変化が見られます
 
① 解答に用いる「指定語句」がなくなり自力で表現する  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 光陵 問2(カ)
② 解答の際の「書き出し語句」や「文末語句」がなくなり、自力で表現する  ・・・・・・・・・・・・ 柏陽 問3(エ)
(4) 従来の古文の文章や設問に変化が見られるようになりました
助詞や助動詞などの古典文法の理解、古今異義語、時代や文化、風俗の知識などが解答の助けとなる出題が複数みられるようになりました。
 
小田原 問4 (エ)(時代や文化の知識),横須賀 問4(ア)(古典文法),(ウ)(時代や文化の知識)  

(5) 選択肢文の数や文章量も変化しています
選択肢文の数が従来型の「4択」だけでなく、「5択」「6択」で出題する独自入試実施校も定番化しています(2008年度平塚江南・柏陽・湘南 2009年度柏陽・平塚江南・横浜翠嵐)。また、選択肢一つの文字量も、100~170字程度の「長文」も散見されます。
(6) 大学入試と重なる出典が見られます 
昨年度までの出典傾向(下記資料)に加えて、今年度は、小説文では、直木賞受賞作家の朱川湊人氏(平塚江南)、新田次郎氏(柏陽)をはじめ、吉川英治賞(横須賀)や児童文学新人賞(小田原)など著名な賞の受賞作家の作品や、論説文では、日高敏隆氏、大岡信氏、長谷川宏氏など、受験で出題される「定番作家」の文章の出題がありました。

 

作者または作品名

 入試での出題校の例
 大学入試  独自入試
 小説文  芥川 龍之介  岡山・早稲田・立教  横浜翠嵐
 島木 健作  立教  柏陽
 夏目 漱石  センター試験(08)・上智・中央  多摩
 論説文(評論)  内山 節  学習院  柏陽
 中村 量空

 大阪府立大

 平塚江南
 茂木 健一郎

 京都・早稲田・明治・青山学院・法政

 横須賀
 山崎 正和  神戸・学習院・日本女子  多摩
 古文・漢文  宝物集  中央  小田原

国語の独自入試問題は、3年後の大学入試に向けて基礎学力を試す問題であるといえるでしょう。それは難関大学入試で頻出の作家の文章や、世俗的に著名な作家や直木賞受賞など評価の高い作家の文章が、独自入試の素材文として用いられるようになってきていることからもうかがえます。以上のように、国語では「問われていることを的確に捉えこと」を大前提として、段落間のつながりや関係を踏まえて要点をとらえながら、文章全体の内容・主題・要旨を捉える力が求められているといえます。 
                                                          


 
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