>>2008年度独自入試問題の傾向 |
2008年度公立高校後期選抜では学力向上進学重点校の多くが高競争率となり、積極的に独自入試にチャレンジした受験生が多くみられました。共通問題に比べて高い学力が必要とされるのが独自問題。実施から4年目を迎え、2008年度はどのような出題傾向がみられたのでしょうか。 |
★各教科の共通問題と独自問題の違いと傾向
まずはじめに、英・数・国それぞれの教科について、共通問題との違いや特徴を各教科の先生の分析とともにみていきましょう。
≪英語≫必要なのは英文を英語のままで読み、理解する力

現在、中学3年生の英語の教科書一冊分の英文の語数はおよそ2000語。2008年度独自問題の英文の平均語数も約2000語です。つまり多くの独自入試では、一年間で学ぶ教科書一冊分の英文を制限時間内で解かなければならないことになります。そこで求められる能力は、「英文を日本語に訳すことなく、英語のまま直接理解する力」つまり英語を通じての読解力(速読力)で、センター試験で求められる力と同じです。すべての独自入試は3年後の大学入試に向けて基礎学力を問う問題であるととらえてよいでしょう。表は2008年度英語長文問題の語数比較です。他の独自入試実施校に比べて語数の少ない湘南と横浜翠嵐は、文章難度そのものが高く、設問も高レベルであることは付言しておきます。神奈川県内の英語の独自入試実施校は今年でちょうど10校。出題傾向がほぼ固まってきていると思われる高校も出てきましたが、どの高校でも過去問題にとらわれることなく、「英文を英語のまま読み取る力をつけること」、「中1から中3までの単語や文法事項をまんべんなくおさえること」が最低限必要です。 |
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≪数学≫
必要なのは複数単元の知識を組み合わせて解く論理的な思考力
数学の独自問題では以下のような学力が求められているといえます。
(1)中学校で学習する単元全般についての基礎学力
(2)迅速かつ正確な計算力
(3)複数単元の重要項目を合わせて解く論理的な思考力
(1)は共通問題、独自問題を問わず当然求められる力ですが、(2)については、2008年度の共通問題【問1】と小田原で出題された【問1】を比較すると、その違いが一目瞭然です。
また、問題の難度が高いだけでなく、今年度の横須賀では問題文の内容に沿って正確な作図をした上で解くといった出題もされていました。こういった点も共通問題との相違点としてあげられるでしょう。以下の出題例をご覧ください。設問(オ)は中1で学習する立体(回転体)の体積の求め方、中3で学習する三平方の定理・特徴のある三角定規といった単元の重要項目を用いて解く問題です。また、設問(カ)は、台形の面積の公式、中3で学習する相似な図形の辺の長さの性質、高さが等しい図形の面積の関係、以上の単元の重要事項を用いて正解を導き出します。このように中1から中3までの学習内容から幅広く、かつ融合して出題されることは独自問題の大きな特徴といえます。さらに、解答する上で問題文に沿った正確な作図を行うといった作業力も合わせて必要とされていることがわかります。
■横須賀高校(2008年度)
【問2】(オ)
四角形ABCDがあり、AB=4cm、AD=BC=2cm、∠A=∠B=60°である。この四角形ABCDを、辺ABを軸として1回転させたときにできる立体の体積を求めなさい。ただし、円周率はπとする。
【問2】
(カ)四角形ABCDは、AD=5cm、BC=7cm、AD//BCで、面積が24c㎡ある。この四角形ABCDの対角線の交点をEとするとき、三角形BCEの面積を求めなさい。 |
また、共通問題と独自問題のどちらにおいても、もっとも正答率が低いのが「空間図形」です。空間図形の出題では、中1で学習する空間図形の性質、中3で学習する相似な図形や三平方の定理といった複数の単元が融合して出題されます。二次元の問題用紙の上で三次元のイメージをつくる空間把握力やどの方向から見れば立体図形を平面図形としてとらえられるかといった「論理的思考力」が求められることも、難しいと感じる大きな要因です。以下は横浜翠嵐の2008年度出題例です。受検者の正答率は低く、上記のような力が求められていることよくわかる問題です。
■横浜翠嵐高校(2008年度)
【4】(イ)
右の図1のような、1辺が2cmの正三角形ABCがある。辺ABを4等分する点を点Aに近い方から順にD,E,Fとする。辺BCの中点をGとし、線分BGの中点をHとする。また、辺CAの中点をIとし、線分IC上に点JをID=IJとなるようにとる。図1の正三角形を、線分EG,FH,GIで山折りに、線分DIで谷折りに、それぞれ折り目を境に隣り合う面が垂直となるように折って、図2のような図形をつくった。
この図2において、2点B,C間の距離を求めなさい。 |
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≪国語≫求められるのは段落間のつながりや関係を踏まえて要点をとらえ、文章内容全体を理解する力

国語の独自問題の文章量は共通問題と比較すると、実施8校のうち6校で約10,000~13,000字(原稿用紙で25~30枚)と多くなっています。多くの独自入試実施校で「まとまった文章を正確に速く読み取る力」が求められてることがわかります。
ここからは実際の出題例をとりあげながら独自問題の特徴を見ていきます。
(1)細部理解を問うものだけでなく、「筆者の主張」「文章内容全体の理解」という視点で問う
独自問題では、本文に─線を付してその部分について問うという従来型の出題に加え、細部理解を問うのではなく、「筆者の主張」や「文章内容全体の理解」を問うものが見られるようになりました。
■2008年度出題例

≪柏陽高校≫小説文【問2】(オ)より抜粋
この文章の結末で
、「ナギ」との結婚と一番の海人になることとの関係について、「勇」の気持ちはどのように変化したのか。
≪横浜翠嵐高校≫論説文【問2】(キ)より抜粋
この文章の中では「無から有は生じない」ということが何度も述べられているが、筆者はこの考えをどのようなものとして提示しているか。
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(2)本文内容を理解し、問題文中の言葉を筋道立てて読み取る力が重要
また、以下の出題例のように解答までの“手続き”が複雑化した問題も見られるようになりました。このような問題では、まず本文内容の理解が前提となり、さらに問題文中の言葉を筋道立てて読み取る力が重要となります。
■2008年度出題例

≪湘南高校≫論説文【問1】(カ)
建築を含めて、現代では人間が人間の環境をつくり出していくが、筆者は本文で人間の生活と環境についての、現代の支配的な考え方に反論している。筆者が反論しているのはどのような考え方に対してか。
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(3)選択肢文の数や文章量も変化
選択肢文の数が従来型の「4択」だけでなく、「6択」「7択」で出題する独自入試実施校も見られるようになりました(2008年度平塚江南・柏陽・湘南)。また、選択肢一つの文字量も、共通問題が40~80字であるのに対し、独自100~170字程度になる文も散見されます。
以上のように、国語では「まとまった文章を正確に速く読み取る力」が求められ、「段落間のつながりや関係を踏まえて要点をとらえること」が重要であることがわかります。英語と同様、3年後の大学入試に向けて基礎学力を試す問題であるということは国語でもいえるでしょう。それは難関大学入試で頻出の作家の文章が、独自入試の素材文として用いられるようになってきていることからもうかがえます。高校入学段階で大学入試で扱われる「文章のテーマ」を理解する力が求められているといえるでしょう。
| ■≪国語≫入試問題の出典例 ※高校:2006~2008年度入試,大学:2006および2007年度入試 |
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作者または作品名 |
入試での出題校 |
| 大学入試 |
独自入試 |
| 小説文 |
芥川 龍之介 |
岡山・早稲田・立教 |
横浜翠嵐 |
| 島木 健作 |
立教 |
柏陽 |
| 夏目 漱石 |
08センター入試・上智・中央 |
多摩 |
| 論説文(評論) |
内山 節 |
学習院 |
柏陽 |
| 中村 量空 |
大阪府立大 |
平塚江南 |
| 茂木 健一郎 |
京都・早稲田・明治・青山学院・法政 |
横須賀 |
| 山崎 正和 |
神戸・学習院・日本女子 |
多摩 |
| 古文・漢文 |
宝物集 |
中央 |
小田原 |
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★中学3年間を通じて、独自入試レベルを目標に学習を続けることが可能性を広げる
これまで見てきたように、独自入試は3年後の大学入試をしっかり見据えているといえます。県内公立高校生の大学進学率は50%を突破。2人に1人が進学し、さらに難関上位大学志向が高まる中、進学重点校は独自入試を通して高校入学段階で高い素養を持った生徒を選抜しようとしています。その素養とは、高い論理的思考力や読解力、そして表現力です。独自入試レベルの学力を身につけることは、最終的な高校進学先にかかわらず、将来の大学受験において大きな財産になるといえるでしょう。2008年度は独自入試という高いハードルがある進学重点校に多くの受験生が果敢にチャレンジし、高競争率となったことはお伝えしたとおりです。これから受験に向かう中学生の皆さんにも、独自入試レベル到達を目標に学習する「価値」をぜひ体験してほしいと思います。
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